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フィクションです。


この話は、数年前に書いた2つの話。
「彼女」
http://www6.ocn.ne.jp/~iverson/key412.htm
「彼女 2」
http://www6.ocn.ne.jp/~iverson/key416.htm
と連動しています。
この話を読む前に、上記の2つの話を読んでいただけると、
より楽しんでいただける内容になっております。




















9月10日



「彼」








コパトーンの香りから
日焼け止めの香りに。
私の香りが変わったのはいつだっただろう?
夏の間中、私は日焼け止めの香りがする。
露出は平気。割と好き。
でも、絶対焼けたくない。
矛盾する私のこの気持ちを
日焼け止めと言う救世主が救ってくれる。
SPF50+
強固な鎧が私を守る。





普段の暮らしの中で、
自分がつけている日焼け止めの香りを感じる事はまずない。
ある時をのぞけば。
雨が降る前。
夕立前の空気が重くなる瞬間、
あの瞬間だけはなぜかいつも、
私は自身に塗りたくった日焼け止めの香りを感じる。
まっぷたつに切り取られた太陽の絵が描かれた
あの日焼け止めの香りを自分から感じる。




ふと思う。






















コパトーンの香りから
日焼け止めの香りに、
自分から漂う香りが変わったのは
いくつの時だっただろう?


















海の見える小さな田舎町で私は育った。
小さな小さな田舎町。
真っ白い砂浜の海。
この砂浜が町の唯一の誇り。
このおかげで、夏の間だけは静かな町は
活気にあふれ、人に満ちた。




長い夏休みに入ると、
私はいつも真っ黒だった。
友人達と海に行き、
競うようにして肌を焼いた。
そして競うようにして
声をかけてきた男の子達と次々と寝た。
セックスがそんなにいいものだとは思わなかった。
でも、周りの子達に負けるのはもっとイヤ。
誰よりもたくさん声をかけてもらいたったし、
誰よりも素敵な男の子達に囲まれていたかった。
セックスはその為の手段にすぎないと思ってた。




夏休み、
日中の大半を海で過ごし、
夜の大半をそこで出会った
男の子達と過ごした。
男の子達が泊まってる部屋でお酒を飲み、
男の子が乗ってきた大きな車の後部座席で
下着を脱がされて乳首を舐められ、
性器を弄られ、私の中にペニスを入れた。




顔、声、背格好、性器の大きさ、
下着の脱がし方、性器のさわり方。
キスの仕方、私への愛し方、etc...
何一つとっても同じ男の子はいなかったけど、
あれだけはみんな同じだった。

































コパトーンの香り。





























私は彼らの首に腕を回して、
甘い声を出す。
そうしてあげると、
彼らはとっても嬉しそうだったから。
思いっきり甘い声を出してあげた。
そんな彼らの体からはいつも
あのサンオイル特有の甘い香りがした。
私自身も同じものをつけているので、
普段は感じる事はない。
でもあの瞬間だけは、なぜかいつも強烈に感じた。






















破滅の瞬間。





















男の子のペニスが一瞬一回り大きくなって、
欲望のすべてを私の中に放出する時、
その瞬間だけなぜか私は男の子達がつけている
サンオイルの香りを感じた。
同時にこの瞬間だけ、
自分がつけていたオイルの香りを感じる。
男の子のコパトーンと私のコパトーン。
セックスはそんなに気持ちいいと思った事はないけど、
彼の香りと私の香り。
この二つが私の中で混ざって感じるこの瞬間がたまらなく好きだった。
だから私は男の子達と寝続けた。
セックスをしていれば、
この瞬間を感じていられるんだと思っていたから。




















18歳。
高校生最後の夏。
私は恋をした。
ままごとじゃない、初めての恋。
都会の大学に通う3つ年上の彼は、
夏の喧噪と一緒に、この町にやってきた。








「となりいいですか?」








およそナンパとは似つかわしくないその言葉に、
思わず笑ってしまう。
けだるく顔をあげると、皆既日食。
強烈な7月の太陽と、私との間に彼がいた。
ひとなっつこい笑顔。
よく焼けた肌。
コパトーンの香り。
笑いながら彼はもう一度言った。












「となりいいですか?」













私とまみとあやか。
昨日と同じ。
去年と同じ。
私達の夏の暮らし。
お酒を飲んで騒ぐ。
中身のない会話を繰り返して。
私達にお酒を飲ませようとする男の子の魂胆なんてみんな同じ。
私達が酔っぱらいさえすれば、
アタマが緩くなってセックスが出来ると思ってる。
馬鹿みたい。






その夜、彼と彼の先輩2人、
私とまみとあやか
6人でお酒を飲んで花火をした。
暗い海辺にはじける夏の花と笑い声。
大きな声で笑った。
私はいつになくはしゃいでいた。
昨日と同じ。
去年と同じ。
なのにいつもと違う。






いつものように飲まされて飲むんじゃなく、
この日は自分からたくさんお酒を飲んだ。
夏の間、この町にやってくる男の子達はみんな、
飲んでる間中、
何かのゲームをして、
罰ゲームだなんだと理由をつけて、
必死になって私達にお酒を飲ませようとする。
馬鹿みたい。
お酒を勧められば勧められるほど、
私の中で気持ちが醒めていく。
馬鹿みたい。
馬鹿みたい。





それでも私は彼らと寝てしまう。
お酒を飲んだ後、
男の子の下に組み敷かれて、
男の子の首に腕を絡めて
喘ぐ。
「き、きもち、いい。」
吐息混じりに甘く喘ぐ。
「もっと・・・もっとし・・て。」
気をよくした男達は、
ますます激しく動く。


































そして破滅。
























































コパトーンの香りが重なる。





























翌日の海で、
友人達に昨夜の報告を聞く。
そして自分の報告をする。自慢する。
自分を選らんだ男がいかにいい男だったか。
セックスがうまかったか。
負けたくなかった。
誰にも負けたくなかった。
この瞬間の為に、
夏の間私は、
町の外からやってきた男の子達と肌を重ね、
香りを重ねた。









「となりいいですか?」
彼は違った。
コンビニの袋の中、
花火と一緒に乱暴に詰め込まれた冷えた缶のお酒達。
その中から何気なく手に取ったリキュールを持つ私の手を、
彼がつかんだ。












「高校生だったんだ。やめときなよ。」











笑っちゃっう。
「ばーか。」
彼の目の前で、
手に取った缶をおもいっきり振りまわして、
力いっぱいプルタブをひっぱった。
プルタブの向こうから
桃とオレンジの香りの液体が夜空に飛び出し、
シュプールを描いて彼のほほと髪を濡らした。
それを見てまたみんなで大笑いをした。






















私はもう彼に恋していた。





















彼にもたれたままお酒飲んだ。
彼の吐息が、香りがたまらなく気持ちいい。
肩に回してくれた腕が心地よくて溶けちゃいそうだった。
両腕で作れる小さなサークル。
その小さな宇宙の中に入れてもらえる幸福感。
守られて弱い生き物になった気分になる。
海から吹く風が、
私と彼の髪を揺らす。
お酒が美味しくて止まらない。
私はすっかり酔っていて、
夢中になって自分の話をしてた。
学校の事。
友達の事。
両親の事。
小さい頃の思い出。
将来の夢。
そんな話を彼は楽しそうに聞いてくれてた。
私の肩を抱いたまま。
気がついた時、
一緒に飲んでいたまみもあやかの姿もなかった。
彼の先輩達も。





逃げるように、
隠れるように二人ずついなくなる。
去りゆく二人は、
見ないふり。
気づかないふり。
私達のルール。
暗黙の掟。
いつもと同じ光景。同じ事。
なのに、フリじゃなく気づかなかった。
4人がいなくなってしまってる事に気づかず
夢中になって自分の事を話していた。






そんな自分が恥ずかしくて
照れ隠しに私からキスをした。
二人きりになっていた事が嬉しくて
もう一度キスをした。
彼の口からビールの香りがする。
私の口からは今口に含んでいる、
桃とオレンジのお酒の香り。
その二つが重なって、
私は夢中になって彼の舌を吸った。
口に含む骨のない熱い固まり。
波の音を聞きながら。






セックスがそんなにいいものだとは思ってなかった。
したいなんて本気で思ったことなんてなかったのに
濡れて・る・・・。
何もしてないのに勝手に。
そんな自分の体の変化に驚いていた。
抱いて欲しい
その気持ちが先だったのか
濡れた自分のカラダに煽られたのか
今となってはわからないけど
あの時ほど男の子に
抱かれたいって思ったことはない。





抱いて欲しい。
思いっきり抱きしめて欲しい。
今すぐ、いつもの男子達がする事をして欲しかった。
普段ならなんとものない事なのに、
恥ずかしくて言えない。
そんな気持ちのまま、
ただただ彼の舌を吸い続けた。
早くなっていく自分の心臓の鼓動を聞きながら。





舌をつたって流れ込む彼の唾液に、
濡れた唇のたてる音に
性器の奥が熱くなっていく。
合わさった小陰唇が溢れてきたもので音をたてて開きそう。
触られたらこぼれちゃう。
自分のカラダのいやらしさに目眩がする。





いつもの男の子達なら
すぐにワンピースの裾から手を入れてくる。
私のそこに手を伸ばす。
期待してる。
早く。
早く手を入れて。
私に触れて。
もうこぼして。



















彼の腕は動かない。















恥ずかしかった。
もどかしかった。
自分一人でこうなってしまってる事がとても。
知られたくない。
知って欲しい。
もう我慢出来ない。





彼の舌から唇を離して
小さな声で言った。
































































































「ねぇ・・・



  えっちして。」























































「子供となんてしねーよ。」














































我慢の限界。
「馬鹿!!意地悪言わないで。」
いつも男の子達が私にするように、
私は彼に覆い被さった。
どうしていいか分からない。
いつも求められる方だったから。
いつもは繋がったカラダに勘違いして、
ちょっと好きになる。
先に「好き」って気持ちが溢れたら、
どうしたらいいの?





乱暴に彼のTシャツをめくって
首筋に、おなかに、
脇の下に、乳首に、舌を這わせた。
男の子達はいつも私にこうしてた。
一生懸命彼の乳首を舐めた。
首筋に舌を這わせて軽く歯をあてる。
乳首を甘噛みしながら、
手を伸ばして紺色のコットン地の短パン越しに、
彼のペニスに触れた。













堅い。











堅くなってる。
嬉しかった。
もしかしたら本当にしてくれないかもと思ってたから。
そして少しおかしくなった。
「子供となんてしねーよ。」
格好つけてたくせに、
子供に感じてんじゃん。
堅くなってんじゃん。
こう思うと少しだけ余裕が出来た。
ちょっとだけ意地悪な気持ちになって言った。






































「ねぇ、堅くなってるよ。
 子供とはしないんじゃかったの?」






































「ばーか。」






















そう言うと彼は、
私を抱きしめて私の舌を吸った。
そっと離れて、Tシャツを脱いだ。
Tシャツで一瞬顔が隠れて、
自分とは違う荒々しい肉体を見せつけられる。
さっきまでTシャツをめくって舌をはわせていた胸なのに
あの胸に抱きしめられてたんだと思ったら急に恥ずかしくなる。
脱いだTシャツを砂浜の上に敷き、
その上に私を寝かせた。
ワンピースのいたる所から手を入れて
私の気持ちいい部分に触れた。
首筋を舌が這った時、
声が漏れた。
優しくて野蛮な彼に翻弄され、
気がついた時はスカートの裾ははだけ、
下着はもう穿いてなかった。
自分から出てる声にびっくりする。
いつもと違う。
自分の声。
背中に敷いたTシャツからコパトーンの香り。
彼からも絶えずコパトーンの香り。
大好きな香りに包まれたまま、
彼の首筋に腕を絡めて
何度も何度も彼の名前を呼んだ。






私は初めて男に抱かれた。
今まで何度もセックスはしてきたけど
抱かれてなかったんだ・・・。





抱きしめられた腕の中で、
自分が彼より小さいことに気づく。
彼の堅さで自分の柔らかさに気づかされる。
優しくなぞる指の流れに自分のカラダの曲線を知る。
溶けてしまいそうだった。


























































満天の星が落ちてくる。





































彼の腕の中で果てた。
とても深く。
深く。













































彼の息づかいも荒くなる。
























「イき・・そう。

 ど・・う・・・すればいい?」
















3つ上の彼が
途切れ途切れにすがるような目でこう言うのが
可愛くて、いとおしくて、たまらない。
私に感じてくれてるのが嬉しかった。




私がしてあげる。
私が気持ちよくしてあげるから。




そう言って、
彼の胸を押さえつけて仰向けに寝かせた。
彼の上に覆い被さってペニスを口に含む。
いとおしくてたまらない。
飲み込んでしまいたい。
そう思いながら、一生懸命舌を動かした。
口の中の存在感にうっとりする。
私の動きに合わせて、
言葉にならない声を彼が発する。
それがまた嬉しくて私は一生懸命ペニスを吸った。
剥き出しにされて、ぬるぬるになったクリトリスを
彼の膝にこすりつけながら。





























「い・・・

 
 い く・・・・。
















































コパトーンが広がる。
彼の香り。
私の香り。



































口いっぱいに彼のが広がって
流れ込んできた。
私はカミサマから
世界で一番大切な飲みものを頂いた動物のように、
それを飲み込む。
飲んでも飲んでも足りない。
一生懸命彼のを吸った。
リズムをつけて吸うたびに、
彼の腰が動く。
大切な飲み物が溢れてくる。
私はいつまでも彼のペニスを舐め続けていた。






















彼が短パンを穿き、
私はワンピースの裾を直して、
二人で砂浜に寝っ転がった。
気がついたら彼の腕で眠っていた。
目が覚めた時、
ワンピースの下から抜き取られた
ブラジャーとパンティー、
そしてくしゃくしゃになった彼のTシャツが
アタマのそばに転がっていておかしかった。





彼を起こさないようにそっと起き出して、
下着を身につけた。
彼のTシャツをたたみ、
そっと顔を近づけてみる。
彼の汗と私の汗。
彼のコパトーンと
私のコパトーンが混ざった香り。
世界で一番いい匂い。












夏の間、
彼は海の家でアルバイトをしてた。
私は高校生最後の夏休みの昼間を
ずっと彼の働く海の家で過ごした。
かき氷やジュースを頼み、
働く彼を、1日中見ていた。
そして、夜がくるたびに、彼に抱かれた。
彼の車、岩陰、砂浜、海の家のシャワールーム、
彼が寝泊まりしてた海の家の二段ベット
色んな所に私達の香りを残した。



彼は私の性器をいつも丁寧に舐めた。
私は恥ずかしくてたまなかったけど、
それ以上に気持ちよくてたまらなかった。
狂いそうだった。
同じように私は彼のペニスをいつも丁寧に舐めあげた。




生まれて初めて
セックスの快感を知った。




抱かる度に、
幸せでたまらなかった。




抱かれる度に、
喜びと後悔、
幸せと不安で心が震えた。




































知っていたから。









































































夏に終わりがある事を。









































18年間生きてきて一番幸せだった。
18年間生きてきて一番気持ち良かった。
18年間生きてきて一番夏が終わるのが辛かった。
18年間生きてきて一番日に焼けなかった。
太陽が出てる時間はいつも
働く彼のそばにいたから。





お盆を過ぎ、
朝夕の空気が少しひんやりしはじめた頃、
終わりの日がやってきた。
私はコンビニで、
使い捨てカメラをひとつ買って、
適当に2、3枚シャッターを切って
彼を見送りにいった。


「これ、家にあったの。
 使い切りたいから写真とっていい?
 写真出来たら送ってあげるよ。」


デジカメでも携帯でもない、
使い捨てカメラ。
ただただ彼が住んでいる街の名前が知りたかった。








「出来たら送るから、住所教えて。」















彼の右手に握られたカメラ。
思いっきり腕を伸ばして写真を撮った。
キスしながら。
「ばいばい」
車に乗り込む彼の背中に私が言う。









「今度遊びにおいでよ。」




「また遊びに来るから。」




どっちの言葉でもいい。
聞きたかった。















































「ばいばい」


























車に乗り込んだ彼は、
ふり返ってこう言った。














欲しかった言葉はなかった。
















少し高くなった空の下
車は走っていった。



















バタバタと新学期が始まっても
私の心は、
あの夜の浜辺を彷徨っていた。
彼の事ばかりを考えてた。
彼からは、
時々思い出したようにメールは届くけど、
そこに私が欲しい言葉は決して書かれてなかった。


そんな9月が半分過ぎた頃、
私は決心した。












 9月の最後の土曜日、
 彼に会いに行こう。













「写真出来たよ」って渡しに行こう。













ものすごく不安だったけど、
彼に会える。
また逢えるんだ、
こう思うだけで心が弾んだ。
不安がないって言ったら嘘になる。
でもそれ以上に彼に会える期待にあふれていた。

またあの腕に抱きしめて貰える。



お盆の時に、
親戚のおじさんから貰ったお小遣いで、
新しい洋服を買った。
おじいちゃんにおねだりしてお小遣い貰った。
そのお金で新しい下着を買った。
赤の下着。
赤の下着が好きって言ってた。
白地に赤のレースの下着。
お店の中で一番大人っぽく見える下着。
これを見た彼がペニスを堅くしてくることを考えた。
「かわいいね」
こう言いながら、優しく脱がしてくれて、
丁寧に私のに口づけてくれる所を想像した。
また、あの腕の中で溶けてしまう事が出来る。
その想像だけで、私は何度も何度も独りで慰めた。








髪の長い女の人だった。
真っ黒の髪の毛が、
秋口の柔らかい日差しを浴びて
キラキラと輝いている。
その黒髪と対照的に透き通るような白い肌。
人形?
小さい頃、母にねだって買って貰った
外人の名前のついたお人形にそっくりだった。
真っ白な肌の人形は、
彼の腕にぶら下がっていた。
とても楽しそうに。
彼の腕にはスーパーの袋。
私には分からない話をしながら
二人、笑いながら歩いていた。

















私を見つけた瞬間、


彼の目が大きくなった。


























































そして顔をそむけた。






























彼が、
彼女が、
腕を絡めた二人が、
自分の目の前に建つ
集合住宅の玄関の中に消えていくのを
私はただ立ちつくして見ていた。
私を見つけた時の彼の顔。
あの表情。
あの目。
目。
















何も言えない。
















動けなかった。



















































どれくらいそうしてただろう?
























突然の土砂降りの雨に、
我を取り戻して、
空を見上げた。
9月の夕立。
新しく買った洋服も下着もキスしてる写真も
全部全部びしょ濡れになった。
そのまま濡れるのにまかせていた。





ばーか。ばーか。
小さな声で節をつけて口ずさむ。
誰が?
彼が?
私が?





ばーか。ばーか。
濡れながらずっと口ずさんだ。
海の汐と夏の太陽のせいで、
すっかり色素がぬけてしまった茶色の髪から
雨のしずくがこぼれた。
小麦色の首筋から






























































コパトーンの香り。






































地元の短大を卒業した後、
両親の反対を押し切って都会の会社に就職した。
夏が終わると無くなってしまうコパトーンの香りが、
そこにはいつまでも続いてると信じていた。
私の幸せがあると思っていた。
彼女はそこに住んでいた。
私から去った香りが戻っていく場所。
私はもう幸せを失いたくないと思っていたから。





ずぶ濡れのままで
電車に飛び乗って町に帰ったあの夜から
私は再び男と寝るようになった。
年上の男。
年下の男。
同じ歳の男。
声をかけてくる男達と片っ端から寝た。
自分のカラダに復讐するかのように
同じような夏を過ごした。
いつか、あの夏私の中で起こった
あの感覚を与えてくれる人に出会えるのでは
・・・すがるような思いで。





ううん。
本当は醒めていたくなかっただけなのかもしれない。
岩陰、砂浜、海の家のシャワールーム、etc...
色んな所に残した私達の香り。
彼の香り。
地元は彼に溢れていた。
忘れたいのか、
無くしたくないのか。
幾千もの男達の首筋に腕を回し、
幾重もの男達の腰に足を絡めて喘いだ。
違う。
どの男も違う。
あれを与えてくれる男はドコニモいない。



















コパトーンの香りの夏




































いつから日焼け止めにしたんだっけ?































香りを求めて街に来た。
ここには海がない。
いつの間にか、
コパトーンは嗅がない香りになっていた。
なのに、相変わらずあの時だけ香る気がする。


破滅の瞬間


そんなはずないのに、
私は幻の香りを嗅ぐ。
その瞬間が欲しくて、
何人もの男に抱かれ続けた。









コパトーンの香りから日焼け止めの香りに
私の香りが変わった頃、
あの夜、私の中ではじけた感覚と、
目の前にいる男達が私に与える感覚は、
似ても似つかない別物だって事実に気がついた。
でもそんなセックスですら、
感じるようになっている自分に気づく。
愛してもない男達のソレを自分の中に受け入れて
あられもない声をあげている自分が、
欲にまみれた動物のような思えた。
惨めだった。





コパトーンの香りから日焼け止めの香りに。
私の香りが変わったのはいつだっただろう?
・・・私は嘘つき。
本当は知っている。
色んな事を知っている。知っていた。
気がついていた。
本当は海辺の故郷の方が
あの香りに溢れていることも知っていた。
それでも私はこの街に来た。
彼がいる。
どんなに小さい可能性だとしても、
また彼に会えるかも。
それだけを思って私はここに来た。






9月のあの日。
彼の彼女を見たあの日。
上等の女に打ちのめされたあの日から、
私は変わりたかった。
すぐに日焼け止めを使い始めるほど素直じゃない。
でも、綺麗になりたかった。
綺麗になってもう一度彼に会いたかった。










































日焼け止めという鎧を身につければ、
あの人形に近づけると思った。





























































私は彼のあの彼女になりたかったんだ。
































コパトーンをやめた。
日焼け止めを塗るようになった。
夏だけの香り、
夏だけの女に成り下がりたくなくて。
それでも幻の香りに悩まされる。
誰に抱かれても、
私はあの夏に回帰してく。
















そんな幻臭の中を彷徨っていた頃、
アイツに会った。
会社の同僚の紹介。
紹介に気乗りしない私を
同期で一番の仲良しだったあさみが
紹介の場所まで一緒に行ってくれた。

あさみは私がしてる事に気づいてる。
気づいてて知らないふりをしてくれる。
私の事をいつも心配してくれ・・て・・・た?
















約束のお店に着いた時、



息を飲んだ。
























































































































彼がいた。
















































嘘。
違う。
彼そっくりの男が、そこにいた。
何が同じなんだろう?
顔も服装も体つきも声も何もかもが違う。
でもそこには彼がいた。
確かに。










よくアイロンのかかったシャツ。
その向こうから、
コパトーンの香りがするような気がした。











勘違い。
アイツは違った。
アイツと初めて寝た夜、
魔法がとけた。
私は呪縛から解放された。
セックスで初めてコパトーンの香りを感じなかった。
本当に彼を忘れられると思った。





救世主のアイツに恋をした。
寝ても覚めてもアイツに夢中だった。
その夜から、
アイツの事ばかり考えて暮らした。
他の男はもう必要ない。
私は獣にならなくていい。
コパトーンの香りは、もうしない。
惨めにならなくていい。
愛してる男にカラダを開き
愛してる男に抱いて貰う。
思う存分抱きしめて、
慰めて貰う。
愛して貰う。
幸せな日々。








アイツのセックスは、
あの夏の彼のセックスとはまったく違うものだったけど、
それでもそれまで私の周りにいた誰よりも
私を気持ちよくした。
とろけさせた。
私も一生懸命
アイツをアイツ自身を愛した。
イク瞬間のアイツの顔が可愛くて、
たまらなく大好きだった。















つきあって半年が過ぎた頃、
毎年となりの駅の大きな河原で開催される
花火大会に誘った。
例年は興味なく過ごしていたソレ。


「7月の1週目の土曜日、
 隣の駅の河原で花火大会があるの。
 一緒に行こうね。
 この前ね、お母さんから電話が来た時、
 彼氏が出来たって話したの。
 そしたら、お母さん、浴衣を作ってくれたの。
 これ着て一緒に花火にでも行っておいでって。
 うちのお母さんね、和裁の先生なの。
 だから、すごい可愛いんだから。
 楽しみにしててね。
 私もすごい楽しみ。
 浴衣着たら私、すごい可愛いんだから。
 楽しみでしょ?
 笑」
 

年甲斐もなく
はしゃいでアイツに伝えた。











アイツは言った。



















































ごめん。
その日は仕事で行けない。
















































そっかぁ・・・
























仕事なら仕方ないね。
じゃあ私は、家でごはん作って待ってるね。
お仕事終わったら電話して。




楽しみにしてた分、
寂しかったけど、
その日もアイツの腕に抱かれて寝た。
寂しさは少し薄れた。































「仕事で今日は帰れない。」
























花火大会当日、
アイツからのメールを見て、
もう一度凹んだ。
仕事がうまくいって、
早く帰ってきて、
一緒に花火に行けるかも。
もしかしたらほんの少しでも、
一緒に花火が見れるかも
そんな都合のいい事を考えながら
連絡を待っていたから。





寂しさを紛らわせようと思って
浴衣を着てみた。
せっかくお母さんが作ってくれた浴衣。
1枚くらい写真を撮って送ってあげよう
こう思って花火大会の会場に一人で出かけた。
もちろん写真は、アイツにも送るつもり。
どんな返事が来るかな?
かわいいって言ってくれるかな?
浴衣を着た私を抱きたいって言ってくれるかな?
こう考えたら、ほんの少しだけ楽しくなった。
アイツに浴衣を脱がされてるシーンを想像して
少し恥ずかしくなる。
下着の奥が熱くなる。








夜空に轟く轟音。
赤、青、黄色。
花火があがる度に
辺り一面が花火と同じ色に染まる。
そこを埋め尽くしている人々のほほを染める。
私はもう少し落ち着いた場所で
花火が見たくて人の少ない方に向かって歩いた。
辺りが明るくなると、
ついつい空を見上げてしまう。
見上げる度に誰かとぶつかる。
仕方なく花火を諦めて歩いていた。











辺り一面がものすごく明るくなったと思ったら、
ひときわ大きな音が夜空に轟いた。


































その先にアイツがいた。


















































































あさみと一緒に。



































黒地に赤の大輪の花が描かれた浴衣。
アップした髪。
浴衣を着たあさみは、
私には見せた事のないような満面の笑顔を浮かべて、
アイツの腕にぶら下がっていた。
あいた方のアイツの手には缶ビール。
二人、笑いながら空を見上げていた。






花火の小休止とともに、
顔を下ろす。






















私と目が合う。





























私を見つけた瞬間、







































アイツの目が大きくなった。







































あさみの目が大きくなった。








































二人の顔。
驚愕に満ちた顔。
恐怖にゆがむ顔。












私は逃げるようにして、
自宅に戻り、
浴衣を脱ぎ捨てて洗濯屋に持っていった。
浴衣なんてもう見たくもない。
そしてその足で携帯店に行って、
一緒に契約した二人の通話が無料になるという携帯電話の解約をした。
解約の手続きをしてる間中、
携帯は鳴り続けていた。

























馬鹿にするな。































一言だけ呟いて携帯を殺した。

電源を切った。




















私は再び男と寝るようになった。
コパトーンの香りの世界に戻ってしまった。
男友達、
見ず知らずの男、
会社の同僚、
行きつけの店のマスター、
仕事で知り合った男、
妻子持ちの上司、
求められれば求められるまま、
声をかけられば、声をかけられるまま、
私は男達と寝まくった。





どの男も
抱く前は私の事を女王のように扱う。
抱かれてる間は、
私は目の前の男に求められていた。
その感覚が気持ちよくてたまらなかった。

























王国はバブル。


王位はいつまでも続かない。


香りのように消え失せる。





















私の中に欲望を吐き出した瞬間、
男達はいつも豹変する。
女王だった私は、
放出と同時に、
哀れな町娘に戻る。
否、町娘ならまだ我慢出来たかも。
数時間前まで女王だった私は、
放出ともに、
田舎から出てきた女。
垢抜けない女。
股のゆるい女。
都合のいい女。
誰とでも寝る女。
惨めな女になりはてる。
男達の態度。
私を見る目。
蔑んだ目。
目。







男と寝る度に
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
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私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。
私は、惨めになった。


































































それでも寂しくてやめられなかった。













































幻の王国でも無いよりはマシ。


































でも


























































男が帰ると、




シャワーを浴びながら一人で泣いた。




















































その夜、
久しぶりに高校生の妹から
メールが来た。





お姉ちゃん元気?
お姉ちゃんが去年ママに作って貰った浴衣、
今度の海開きの日のお祭りに着たいから、
貸してくれない?





絵文字が溢れるメールを見て、
1年前の花火大会のデキゴトがフラッシュバックする。
目・・・
あの目。
あさみの目
アイツの目
彼と同じあの目。
目。






あの日の夜から、
洗濯店に出したままになっている浴衣。
預かりの伝票なんて当然残ってなかった。



104で電話番号を聞いて、
電話をかけてみることにする。
1年前に出したものが、
果たしてまだ残ってるものだろうか・・・
そう思いながら。



妹と同じくらいかな?
電話口には、
とても若い声の女の子が出た。
状況を説明すると、











「ごめんなさぁい。
 お父さんとお母さん旅行に出ていて分からないですぅ。
 明後日11日には帰ってきますから、
 その日にまた電話して貰えませんか?」









私が客なんだから、
そっちから電話くれればいいのに・・・
そんな事を思いながら電話を切った。
舌ったらずなしゃべり方。
世間知らずの対応。
あの頃の私のよう。
電話口からあの夏の香りを嗅いだ気がした。
あの夏の海を思い出す。
久しぶりに桃とオレンジの味がする、
あのお酒が飲みたくなった。
今ではちっとも飲まなくなったお酒。
あの頃、名前も知らずに飲んでいたお酒。
真夏の太陽のように赤く、黄色いお酒。
苦みも酸味のないお酒
あの頃の私のように甘く甘く。
コパトーンの香りがしていた頃の私自身。
ファジィーネーブル。






手早くシャワーを浴びて、
下着を替えて、
化粧を直す。
夜の街に映えるように、
濃いめのルージュをひく。
誰に会う約束をしているでもないのに、
下着まで替えて着飾っている自分がおかしくて
悲しくて少し笑った。








今日は寝ない。
絶対今日は誰とも寝ない。
もうイヤだ。
惨めな気持ちになんてなりたくないもん。









そう呟きながら、
今穿いたばかりのスカートを脱いで、
ジーンズに着替えた。
洗いざらしのTシャツに袖を通す。






出かける前にふと思い出す。
忘れないように書いておかなくちゃ。









テーブルの上にあったメモ帳に書き殴った。































































































7/11 くりーにんぐ。






































































































9月15日




「彼 〜あとがき〜」












僕の大好きな作家の本で、
その中でも一番好きなお話の中に、
こんなシーンがある。
主人公の友人である「鼠」は、
ある日小説を書くようになる。
その小説について主人公はこう語る。


鼠の小説には優れた面が二つあった。
まずセックス・シーンがない 
それに一人も人が死なない。
放っておいても人は死ぬし女と寝る。 
そういうものさ。



そのとおりだと思う。
放っておいても人は死ぬし女と寝る。
誰だって例外なく。







ミスチルの桜井さんは
「HERO」の中でこう歌う。


駄目な映画をもりあげる為に
簡単に命が捨てられてく
違う僕らがが見ていたいのは
希望に満ちた光だ



そのとおりだと思う。








セックス】と【】。
お話を盛り上げる為の一番簡単な方法は
この二つをその中に盛り込む事。
そして駄目な物語の書き手である僕は
当然のように今回の物語の中にも、
この二つを取り込んでしまった。












今年の夏、
ふとした時に
「日焼け止め」の香りをかいだ。
その時思った。
この子も今はこんな香りがするけど、
もっともっと若かった頃は
サンオイルを塗ってた事もあるのかなぁ?
それとも昔から夏はこの香りだったのかなぁ?
車を運転しながら、
漠然とそんな事を考えていた。
その時浮かんだのが、このフレーズ。


















コパトーンの香りから
日焼け止めの香りに。
私の香りが変わったのはいつだっただろう?





















この書き出しで物語を書いてみたいと思った。
書き始めた時、
僕のアタマの中にあったのは、
このフレーズと一夏のラブロマンスだけ。
その後、
この話を盛り上げる為だけに
最終的に、僕は彼女を殺した。
ものすごく罪悪感を感じている。
物語を書き進めていくうちに、
僕は作中の彼女に恋していた。
少なくとも都会に出るまでの彼女は輝いていた。
だからこそ殺すのは忍びなかった。
でもただただ物語を盛り上げる為に、
彼女を殺した。
なんの罪もない彼女を。
書き始めた時は、
彼女とのリンクは僕の中にはなかった。
でも気がついた時には僕の中で、
彼の彼女は彼女の彼女になり、
作中の人物が息づいて、
破滅への階段を一気に駆け上がった。
殺したのは俺なのかな?
彼女の意志なのかな?







自らの命を絶ってしまった彼女。
彼女はあの日、妹からの電話で、
去年の夏を思い出してしまう。
もう誰とも寝ないって決心して出かけた。
なのにまだ夏は始まってないのに
「彼女」はその店で、
幻ではないコパトーンの香りに出会ってしまう。






そして彼女は、
綺麗になった浴衣を受け取ることなく
死選ぶ。





香りを嗅がずに、
綺麗になった浴衣を受け取っていたら、
「楽しかった。またね。」
昨夜の香りを感じさせる言葉が
「7/11くりーにんぐ」の下に、
書かれてなかったら、
浴衣を受け取った後の出会いだったら・・・



















彼女は香りに勝てたのかな?

































・・・・わからない。


















少し話しを変える。
僕は今まで、
一人称を「僕」「オレ」といった、
男性側の視点でしか話を書いた事がない。
ゆえに今回の「私」が一人称になる小説は、
初めての試み。
書き始めてみると、
これが想像以上に難しかったし、
それ以上に恥ずかしかった。






って言うのも、
僕は男なので、
やっぱり女性の事は分からないわけです。
女の子は、
抱かれたいと思った男の子の前では、
体に触られなくても濡れたりするのかな?
女の子はどんな時に男に抱かれたいって思うのかな?
フェラチオが好きって女性って本当にいるの?
高校生が大好きな彼氏のために、
一生懸命がんばって買う下着ってどんなだろう?
死にたいと思う時ってどんな時だろう?
クリトリスを舐められるのって恥ずかしいのかな?






分からない事だらけ。
それを全て想像だけで書いていく。
女の子の心情描写、
あの瞬間の体の変化具合、
あの瞬間、女の子達はどんな事を考えてるのかを
「私」と言うペルソナをかぶり、
主人公の言葉を借りて、
全部僕の勝手な都合と言うか、
妄想で書いてるわけです。
つまり、 この話を世間に公表する時点で、
僕の女性観を、
全世界に対して公表している
ようなものですよね?
自分の女性観をすべて見られてる。
これが恥ずかしくてたまらなかった。
これを読んだ世の中の女性から、











「けっっ むーんぴーすって
 これくらいしか女の事分かってねーのかよ。
 この程度の男だったんだ。つまんねー男」










こう思ってため息をつかれちゃうかもと思うと、
怖くてたまらなかった。
















また少し話を変える。
僕は物語を書く時、
具体的な地名然り、人名然り、
固有名詞は極力書かないようにしてる。
僕は僕であり、
私は私であり、
彼は彼であり、
アイツはアイツ。
町は町であり、
都会は都会であり、
街は街。





地名の固有名詞を使うメリットは、
その地域について知ってる方は、
光景が目に浮かび、話に対して親近感を持つ。
逆に、その地名を知らない人は、
逆の反応を示す。
人名だってそう。
その名前と同じ名前の人物が実生活にいると、
どうしてもその人にダブらせてしまう。
僕が意図してる人物と違う人物を思い描いてしまう。
これがイヤなので、
僕は固有名詞を使わない。
私は私であり、
彼は彼。
街は街。
読んでくれてるみなさんが、
ご自身の過去や現在の恋愛とダブらせて
物語を読み進めてくれればいいなと思ってるから。






ただ今回は便宜上、
登場人物の友人として、
人名を3名書いてしまった。
これが一番の心残りです。
なんとか名前を出さないように出来ないかと色々考えたけど、
やっぱり無理だった。
















4部作予定の
「彼」「彼女」シリーズ。
いよいよ、最終章の「彼2」だけになりました。
またいつかどこかで琴線に触れるような
香りを嗅いだ時、
音を聞いた時、
柔らかさに触れた時、
書き始めようと思います。
どの登場人物が彼2の主人公になるのか、
想像しながら待っていて下さい。












最後になりますが、長い話、
途中、意地悪まで挟んで結論を先送りまでしたのに、
読んでくれてありがとう。
掲示板、メールにて賛否両論のご意見いただきました。
僕自身、この話は精魂入れて書いてるうちに、
すっかり思い入れの深い作品になってしまいました。
ゆえに、ごんなに頑張っても、
いただいた感想に対して、
上手に返事を返せる気がしません。
今回はこのあとがきをもって、
掲示板、メールの返事とさせてください。
不躾をお許し下さい。





















読んでくれて、ありがとう。



















追伸:
この夏、いくえみ綾さんの「潔く柔く」って漫画にはまってました。
おいらが今書いている小説は現時点では4部で完了予定ですが、
いくえみさんの作品みたく、今までの物語に登場させた人物を
違う作品の主役として登場させて、
オムニバス形式で人間関係をリンクさせながら、
この話を、世界を膨らませていけたら楽しいだろうなぁ・・・










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日記

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