前に戻る              topに戻る



ステキな奥様 〜おばさん?〜



台風が関東を襲った先日の事でした。
夕方、私信を出さなきゃって思って、
会社から郵便局の前のポストまで歩いて行ったの。
ふぅー疲れた。今日も忙しかったなぁ。
あと何時間仕事したら帰れるんだろう・・・
ちょっとお散歩して帰ろうっと思って、ちょっと遠回り。






前方民家の前におばさん発見。






容姿・・・恰幅はいいが、この人、若い頃はすごーい綺麗だっただろうなぁって感じの






歳の頃40歳前後のおばさん。

                  

      ↑


 これって問題発言ですか?



問題なら指摘下さい。あやまります。


ぺこり。


でも、だって・・・すげーおばさんに見える40代の人っていません?


逆に、おいおい、まじで?


マジで40歳?


どー見てもおねぇちゃんじゃんって感じの方もいますよね。








民家の前で、

空のペットボトルから蓋をはずして

選別しているみたい。

ふーんって思いながら通りすぎようとしたところ。

突然話しかけられる






「あのぉ・・・・」




「はい?」




「さっきニュースで台風は小康状態(しょうこうじょうたい)って言ってたんですが・・・
 





















 
『小康状態』ってどんな意味ですかぁ?」






「はい?」







断っておきます。



この女性。おいらの知り合いでもなんでもありません。



おいら・・・単なる通行人。

この女性・・・自宅らしき家の前でゴミを片づけているだけの人。



そう赤の他人どころか、性的リビドーも刺激されない人。





そんな人に、





そんな人に、





普通話しかけます?





突然知らない人にこんな事聞きます?














「『小康状態』ってどんな意味ですかぁ?」










とりあえず無視するの悪いような気がしたので、


返事だけする。






「小康状態ですか?
 
 あってるかどうか良く分からないけど、
 
 ちょっと良い方向に向かってるみたいな意味だと思いますよ。」




「そうですかぁ。良かったぁ

 
よくニュース見るんですけど、時々難しい言葉が出て来て

 
困るんですよぉ。」





「はぁ」





「今日もね、さっきニュース見て、小康状態って言われて

 どんな意味なんだろうって考えていたんですけど分からなくて

 次に家の前通った人に聞こうって思っていたんですよ。」





「はぁ」




・・・なんだ、こいつ?
   ちょっとおかしい人か 




「本当ニュースって困りますよね。難しい言葉ばっかりで。」





はぁ・・・。そうですね。」









「あっそうだ!辞書で調べたら良かったんですよね。へへへ」





「そうですねぇ。」





ところで辞書で調べる時は・・・























 
『し』で調べればいいんですよね?」




・・・ちょっと吹き出しそうになる。
いったいこいつは何者なんだ?





「そうですね。『し』で調べると分かると思いますよ。」
























「でもうちには辞書ないし・・・」







・・・かぁーー。いいかげんにしてくれ!







なんか気味悪くなって逃げようとするんだけど、


ずっと話しかけてくる。






「これね、頼まれたんですよ。
 
 捨ててきてって言って、 1,000円貰ったんですよ。
 
 これから○○山ってところに 捨てに行くんですけど、
 
 ここから歩いて30分くらいなんですよ。
 
 いい運動になりますよね。」





「はぁ。」





「やっぱりこの年齢になると、運動不足が気になって・・・
 
 今日は暑いから30分も歩くとノド乾きますかねぇ?





「はぁ。そうですねー」





「あっ、でも、このペットボトル、全部処分しても
 
 たぶん700円くらいしかかからないんですよ。
 
 でもね、お釣りは私にくれるって言ってくれたんですよ。
 
 だから、ノド乾いたら、お釣りの300円で冷たいモノ買えますよね。」





「はぁ・・・」








もう一度強調しておきますね。

このおばさん、見た感じ、話した感じ、

どう見ても健常者なんですよ。

しかもおいらとは正真正銘絶対、赤の他人。









間違っても、



実はおいら、火がとても怖くてたまらないの。

大きな火を見ると、体がすくむっていうか

体が固まっちゃってあぶら汗が吹き出しちゃうの。

自分ではなぜそうなるのか分からないんだけど・・・






でもそれはそれを引き起こすべく事件っての当然あって、

それがトラウマになっていて、火が怖いの。






おいらが生まれたばかりの病院で、火事が発生したの。

患者達はなんとか無事に逃げ出せたけど、

新生児室は火のまわりが早く、あっと言う間にケムリに巻かれる。

勇敢な消防士が一人、水をかぶって火の中に飛び込む。

新生児室は火で真っ赤。ダメだ全滅だと思って逃げようとした瞬間。

唯一出口に近い部分のベットのところだけは火が小さい。

その中に夢中で飛び込み、そこで寝ていた赤ん坊一人を抱えて脱出した。

脱出してきた消防士が告げる。



「頑張ったんだけど、火がすごくて、出口に1番近いベットで寝ていた
 赤ん坊一人だけしか救出出来ませんでした。私の力不足をお許し下さい。」



辺りは、生まれたばかりの我が子を失った母親達の悲鳴にも似た泣き声が。

うっ・・・うっ・・・と嗚咽を堪える父親の声。

一人の女性が叫ぶ。



「その子は入り口の右側にいた子ですか?左側にいた子ですか?」



「右側です。」



「むーーん。良かったぁーーーー!その子は私の子です。」






その叫んだ女性こそが、おいらを20何年間育ててくれた現在の母親。

そしてその火事の記憶は幼かったおいらには残るはずもなく、

ただ、トラウマとしておいらの記憶の奥底にだけ残る。






しかし、驚愕の事実が。

見落としていた、ある大事な事実が・・・

消防士は部屋の中にとりあえず入った。

火の周りが早く、どの赤ん坊も助けることは不可能だと判断。

もうダメだ。脱出しなければと思った矢先、

出口付近の右側にだけ、火が小さく泣き声をあげている赤ん坊が・・・

そしてそれがおいら。

でもね、おいらは、部屋の外側から見ると左側のベットにいたの。

確かに部屋の中から見れば、おいらが寝ていたベットは右側・・・



おいらが寝ていた場所。



部屋の中からだと右


出口から見ると左






運命のイタズラか・・・





空を焦がすような勢いで燃え上がる、紅蓮の炎。

あたりを染める、親たちの泣き声。

その泣き声の中に「王子が・・・王子が・・・」とつぶやく一人の女性。





話は少し変わるが、

一般にはあまり知られていないのですが、

このおいら達が住む人間界と魔物が住む魔界との狭間に

妖精界と言うのがあるのをご存知ですか?

妖精界に住む妖精達は、見た目は人間と変わらず普段は人間として

人間界で生活しているのですが、

20歳の誕生日に首筋にとても変わった形のアザが出来るの。

そして、そおアザは、そこの家の位によって、すべて形が違うの。

アザが浮き出たその日、幼い妖精達は初めて、自分が妖精であると言うことを親に教えられ、

その後の人生を空から降ってくる魔物から人間界を救ったり、

世界中に愛を伝え、広げ、世界中の人が愛に包まれた幸せな生活が送れるようつとめるの。

そして、その妖精界の王家のモノだけが浮かび上がってくると言うアザ。



「☆」



くっきりとした、数分たがわぬ形で白抜きの星形のアザ。



王家の紋章。






話は少し変わるのですが、

おいらの首筋には、とてもめずらしい形のアザがあるの。

なんて言うんだろう・・・

あっそうだ。星の形だ。

この星の形のアザ・・・本当に綺麗な星の形なんだよね。

しかも、何が変わっているかって、昔は無かったんですよ。

でもね、20歳の誕生日の朝、

学校へ行こうと洗面台のところで歯を磨きながら、

鏡を見て気が付いたの。

最初は、昨日さやかちゃんと性交した時に、

さやかちゃんがつけたキスマークかなぁとも思ったんだけど、

日がたつにつれてそのアザはくっきりしてきて、

且つ、中が白くなってきて、気が付いた時には

こーんな形になってた



「☆」






話は変わるのですが、今から二十何年前のある日。

妖精界では、連日連夜、大きな宴が繰り広げられていました。

なぜ?

そうです。妖精界待望の王子が誕生したのです。

妖精界の王様と王妃の間には、あいにく子宝に恵まれず、

もしかしたら世継ぎがとぎれるのではと噂されていた矢先の出来事だったので、

それはそれはみんな大喜びでした。

幸せに包まれておりました。

ところが、そんな幸せな日々は長く続きはしませんでした。






王子が生まれた直後の病院が大火事に見舞われたのです。

出火原因はわかりません。

不審火であることは間違いないのですが・・・

そしてその火事に巻き込まれて、待望の王子は死んでしまいました。

みな口々に言いました。魔物の仕業だと・・・

妖精王が王妃が入院している間に、

若いグラマーな妖精の女にうつつを抜かしておるから、

気を抜いておるから、

大事な王子を殺されてしまったのだと。

いかに妖精といえども、死んだ人間を生き返らせる事は出来ません。






可哀想なのは王女です。

最愛の我が子を失い、王様の愛は冷めてしまい、、

かつ、不心得ものから、



「お前の日頃の働きが悪いから、王が浮気などするのだ!」



と責められる始末。

毎日悲しみに暮れ、泣いて過ごしていくうちに、少しずつ、おかしくなってきました。






それを見かねた、妖精界の長老、かわいそうに思って、

魔法をかけました。



自分が妖精であることを忘れる魔法。



自分が人間であると思いこむ魔法。



過去に妖精として過ごした日々を忘れる魔法。



過去に人間として生活していたと思いこむ魔法。







この魔法。受けるモノにとってはとても苦痛を伴う魔法でした。

意識がなくなる寸前、王妃は呪文のように唱えていました。



☆型のアザ・・・



王家の紋章・・・







時は流れ、

王妃は日本人というモノになり、

人間と幸せな結婚を果たし、

旦那の収入が少ないと愚痴はこぼすものの

それなりに幸せな日々を送っておりました。

30歳の時に旦那の実家である熊本に帰ってきて、

小さいながらの我が家も持てて・・・






そんな生活を過ごしていたある日。

知人から、ペットボトルを捨ててくれと頼まれて

自宅の前でペットボトルの分別をはじめる。

向こうから妙齢の若人が歩いてくるのが分かる。

遠目にも、世界中に愛を与えてまわっているような、

愛らしい容姿に恵まれていることが分かる。



「あぁー。私の旦那も彼ぐらいステキであれば・・・」



と彼女は小さくつぶやく。






その若人が自分の前を通りすぎる瞬間、





彼の首筋に小さなアザが・・・






彼女の脳裏に走る稲妻。






さまざまな景色が頭の中をかすめる。






よみがえる記憶。






おぞましい過去。






伝えなければ・・・






伝えなければ・・・






この世界が悪に魔物に包まれてしまう前に






伝えなければ・・・






彼に真実を伝えようと口を開いた瞬間、






体が固まる。






魔法の効果か?






魔物の仕業か?






真実を伝えようと開いた口から飛び出すのは、






自分の言葉ではない言葉。






誰かが自分の口を操ってる。































「小康状態ってどんな意味ですか?」







どんなに頑張っても自分の口から出てくる言葉は、




摩訶不思議な言葉だけ。




頬を伝う、一筋の涙。


























なーんて展開・・・










絶対考えられないと思いますよ。


はい。










だって、おいらの首筋に☆型のアザなんてないし・・・



火だって怖くないしぃ。



ふぅーーーー






超長い脱線だ。


本題より脱線の内容の方が長くて濃い文章って見たことある?


ないでしょ?


えっへん。



あなたの脱線長すぎるんじゃねーか馬鹿!ばーじん


おいらがしっかり頂きました(笑)







とまぁ、けっきょく・・・








南極大冒険・・・





「結局南極大冒険」ってゲームが初代ファミコンにありましたよね。


おいらアレ大好きでした。


いかん。脱線は終わったんだ。


そのおばさんは、


結局本当に赤の他人なんですが、


なのにね、必死になって、延々と話をしてくるの。






「これから捨てに行こうと思っているんですけど、
 
 この1000円以外は持っていかないようにしますね。
 
 余分なお金持ってると、ついつい使ってしまうから・・・」




「はぁ。」




「老後にむけてお金貯めているんですよ。
 
 だから無駄遣いしないようにいつも気をつけているんですよ。
 
 あっ。今日の300円も使わずに貯金した方がいいですかねぇ。」




「そうですねぇ・・・」




「でも300円くらい貯金してもどうってことないのかしら?」




「はぁ。」




「でも。この300円が10回あれば、3,000円ですもんね。」




「はぁ。」




立ち止まって話すこと10分以上は経過してるであろう。


さすがにおいらも怖くなった。





「すいません。僕急いでいるんで行きますね。」






と伝えると同時に、急いでそのおばさんから離れ始める。


10m〜20m離れたくらいでしょうか。


後ろから大声で叫ぶ声が。




















「ありがとーございましたー

 『小康状態』の意味

 分かったら教えてくださいねー」










みんながそのおばさんとおいらを見る。




勘弁してくれよぉ。




見せ物になってるじゃねーか・・・




ところで、この人なんだったんだろう?




寂しくて誰かに話したかったのかなぁ?




少なくとも僕は怖かったっす。




お前何者?ってずっと心の中で思ってましたー。














前に戻る         topに戻る